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~北海道風力発電プロジェクト~株式会社 市民風力発電 代表取締役 鈴木 亨氏 |
平成26年08月19日
PJ概要: | 北海道石狩市における、地域関係者と連携した風力発電プロジェクト |
総事業費: | 15億円(うち、グリーンファンドより1億円の出資決定) |
PJ所在地域: | 北海道石狩市厚田区 |
CO2削減効果: | 3,854t/年(想定) |
事例紹介: | http://gf.eic.or.jp/example/case140327_03.pdf |
現在、北海道、東北地方を中心に全国16箇所で風力発電施設の建設と運営管理に関する事業を行っています。通常、 こうした事業は大手企業がSPCを作りプロジェクトファイナンスとして行うことが一般的ですが、事業資金の一部もしくは全部をいわゆる「市民ファンド」から調達している点に当社の特徴があります。こうした形を取った理由としては、1点は市民の参加及び地域への経済的な利益還元のため、もう1点は、当社のような中小企業が行う再生可能エネルギー事業に対する銀行融資が厳しかったため、資金調達手段の一つとして必然的に「市民ファンド」を活用したという経緯があります。
消費者側の立場で環境に優しい安全な電力の共同購入を目的として、NPO法人北海道グリーンファンドを1999年に設立しました。ですが、当時は未だ再生可能エネルギーそのものの導入が進んでおらず、購入事業の見通しが立たなかったことから、新たに発電事業に取り組むこととなり、発電事業の母体となる株式会社北海道市民風力発電(2006年に㈱市民風力発電に名称変更)を2001年に設立し、風力発電事業をスタートさせました。
第一号の風車は、2001年に北海道浜頓別町に設置した総事業費約2億円の「はまかぜちゃん」ですが、当時はノウハウも人員も足りなかったため、大手商社の技術的支援と協力を受けながら、それこそ見様見真似で何とか風車を完成させました。第一号風車の建設資金は銀行融資で調達しようと考え、数多くの銀行に事業計画等を説明しましたが、ほとんどの銀行で全く相手にされませんでした。ただ、地元のある銀行から数千万円の自己資本を用意すれば、融資を検討することができる旨の回答があり、そこで、NPOの役員等に対して個人的な余裕資金での出資を依頼しました。そのような中、地元新聞に当社の取り組みが掲載されたことをきっかけに、多くの市民から問い合わせや申込が来まして、最終的には1億4千万円程の資金が「市民出資」と言う形で集まり、以後、「市民ファンド」を活用することとなりました。
このプロジェクトでは、石狩市の基金への寄付と、地元の厚田区への寄付、2本の寄付を計画しておりまして、これらの寄付で地域の活性化に繋げていきたいと考えています。 前者は石狩市の環境まちづくり基金条例に基づく基金に、1kWhあたり0.5円を寄付するという取り組みです。毎年500万円から 600万円程の寄付を20年間、合計で1億から1億2千万円程度を予定しています。これは石狩市の森づくりや環境関連、まちづくり 関連に使われていくものとなります。後者は、市民出資を集めた分から出た利益の一部を、風車を設置する厚田区の活性化に使っていくための寄付です。 FIT制度は地域の方を含め国民の負担の元に成り立っている制度ですから、そこで得た利益は地域に還元していくということが重要だと思っています。 また、今回のような事業が一つのモデルとなって、自分の街でもこれをやろうといった形で横展開していけば、更なる地域活性化に繋がるのではないかと考えています。
現在、北海道内の風力発電施設の発電規模は36万kWですが、環境省の報告によると洋上風力も含めれば北海道内のポテンシャルは、約5億万kWの発電規模があると言われています。このポテンシャルを十分に生かせない理由の一つが、送電線の問題で、道内の系統と、道内と本州とを繋ぐ系統、2つの問題があります。 道内の送電網が整備され、かつ本州への送電線が増強されれば、道内で消費できない電力は本州への売電ができるようになり、道内の再生可能エネルギー事業は大幅に拡大し、結果として道内経済や雇用に好影響を及ぼすものと考えています。
正直に言いますと、この事業は決して簡単なものではありません。夢を持つだけではなく、ビジネスとして地道にしっかりとやっていこうという心構えが必要です。理想と現実とのバランスを取りながら邁進していってください。